不動産投資ほどいろいろな種類ややり方そして目的がある投資方法はないのではと思います。不動産は人としての基本的な欲求である「衣・食・住」のうちの一つです。「住」は投資とは一切関係なく生活していく上ではなくてはならない必須のものとして考えている人も多くいます。
一方、そんな必須のものだからこそ確かな需要がそこにあるわけなので、そこを投資の対象とする考え方もあります。身近な例としては「サラリーマン大家さん」がこの10年位の間に一気に増えました。
不動産が様々な側面を持っているのは、投資対象としてみたときに何をもって投資が成功したと考えるかもいろいろな見方ができることでもわかります。一般的に株式・投資信託・銀行預金などでは、成功の尺度としては投資資金(元本)をどれだけ増やすことができたかで考えるのではないでしょうか。
日本における不動産投資も、バブル時代と言われていた1980年台後半から90年前半にかけては、「買えば儲かる」といわれ借金をしてでも不動産を買っていれば物件の値上がり益によって売却したときに収益を上げることができました。まさしく株式と同じように購入価格と売却価格の差に一喜一憂する投資手法でした。
今では日本の不動産価格の今後の上昇を見込む人は少ないのではないでしょうか。そのかわりに「キャッシュフロー狙い」「節税」「相続税対策」「年金代わり」「ミドルリスク・ミドルリーターン」などの他の様々なメリットを不動産投資の目的に上げる人が増えてきました。
それぞれの目的や考え方はどれも正しいものです。しかしアメリカで不動産業に従事する見としては、アメリカに住む人達が不動産を購入する・投資するときの考え方はちょっと違うなと思う場面が多々あります。
そこでもう一度、不動産投資の目的とその考え方を整理してみたいと思います。
1.「キャピタ狙い・インカム狙い」
日本のお客様とお話させていただくと米国不動産投資の目的として「インカム狙い」を挙げられる方が多いです。逆にアメリカ人のお客様だと「キャピタ狙い」の方がほとんどになります。
なんでこれほどはっきりと違いが出てしまうのでしょうか?
日本は「失われた20年」という言葉が表すようにバブル崩壊後不動産価格は大きく下落し、ここ数年ようやく上昇の機運が見られるようになってきました。2020年のオリンピック景気による一時的なものなのか、それとも安倍総理の「3本の矢」プラス黒田総裁による日銀の異次元緩和はようやく効いてきたのかは判断の分かれるところではありますが。
このような状況では大きくキャピタゲインを見込むのは難しく、投資家目線としては不動産所有期間のインカムからの収益に期待したくなるのも自然な考え方かと思います。
一方の米国在住の方の目線としては「不動産からのインカムがあるに越したことはないが、それよりも中長期的に物件価格の上昇によるキャピタルゲインを目指したい」というもの。
この考え方の背景には日本とは違うアメリカならではの状況があります。
例えば、「インカムが狙える」イコール「利回りが高い」ということは、日本であればおそらく投資先を都心にするか地方都市にするかの違いになるかと思います。このときに考慮するポイントとしては一般的には次のようなものではないでしょうか。
ー 人口の増減の予測は
ー 土地評価額の上昇・下落の予測は
米国で「インカム狙い」イコール「利回りが高い」物件に投資する場合は、上記2点に加えて「治安」「教育」が大きな比重を持って出てきます。
アメリカでは、「治安」と「教育」は金で買うものといわれています。安い物件のエリアは犯罪発生比率の高い治安に不安がある地域になります。高所得層はより治安の良いエリアに不動産物件を購入することとなります。そして公立学校の運営費の財源はProperty Tax(固定資産税)に大きく頼っているので、物件価格が低いエリアでは財源が少なくなり、逆に高価格の住宅エリアでは教育予算もより多くなり、結果的にさらに教育レベルの差が広がりがちになります。
よって需要と供給の観点から「利回りが高い」エリアよりは「利回りが低い」エリアのほうがより需要が高くなり物件価格の上昇もより見込めることとなります。
次回は「税金対策」について取り上げたいと思います。
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