~ロサンゼルス不動産市況アップデート~
コロナウイルスによる感染拡大を受け、ロサンゼルスでは3月8日より感染防止のための外出規制が布かれております。
この外出規制により居住不動産物件の成約件数も4月は前年同月比でマイナス30.1%と、大幅な落ち込みとなりました。
(通常は月間40万件前後ですが、4月は27万7千件)
これは、まず買い手・売り手の双方が、コロナウイルスの感染拡大を受けて、不動産物件の売買を控えたことが大きく影響しております。
下記チャートは物件売買を控えた割合で、3月20日からの週次でのものとなります。
ピークは4月17日の週で買い手・売り手とも約半数が取引活動を控えておりました。
その後、物件売買を控える人の割合は減少してきており、直近の5月15日の週では、買い手は37%、売り手は47%となっております。
コロナウイルス感染者拡大により、米国株式市場では30%を超す大きな下落が一時見られました。
4月以降の株式市場の大幅な回復もあり、不動産取引価格には現在のところ下落の兆候は見られませんが(後述)、買い手・売り手のセンチメントは以下のようになっております。
“現在”を購入のタイミングと考える買い手は若干のみ増加しておりますが、“現在”を売却の良いタイミングと考える売り手は、半分以下に減少しております。
このように売り手が販売を控えていることにより、不動産マーケットでは供給が不足しており需給はタイトな状況となっております。
次に成約価格についてですが、外出規制導入後も下記週次での物件販売価格(List Price)に目立った動きは見られず、コロナ以前の物件価格を維持しております。
(Southern California: ロサンゼルスおよびその近郊)
(Bay Area: サンフランシスコおよびその近郊)
月間ベースで中長期での推移が下記チャートとなります。
2008・2009年の金融危機を大底として、10年に渡り右肩上がりの上昇を続けております。
直近4月の販売価格の中間地は$606,410で、前年同月比で0.6%の上昇となっております。
不動産物件取引件数の見込みですが、前述のように4月に37%の落ち込みとなりましたが、今後は取引件数が徐々に戻るものと考えられます。
ソーシャル・ディスタンスのために、従前のようなオープンハウス(誰でもが見れる公開された物件内覧)は開催できませんが、バーチャルでのオープンハウスや、内覧者を二名までと限定した物件内覧にて、お客様に物件のご案内ができるようになっております。
その結果、物件内覧(Showing)件数も3月下旬を底に戻りつつあり、それに伴って成約件数も今後の回復していくものと考えられます。
また、住宅ローンの申請件数(Mortgage Application)も、3.2%(30年固定)台前半と史上最低水準にあることもあり、4月10日頃より増加を見せております。
賃貸物件での賃料支払い状況ですが、家賃の支払い猶予が認められたあとでも、支払い状況に大きく変化は見られません。
下記5月6日の週での家賃支払い状況ですが、月次では4月の78%から80.2%へと上昇(支払い済みが増加)しております。
これは在宅勤務により家賃支払いプロセスが速やかに行えたためといわれております。
またこの80%前後の数値は昨年2019年とも同レベルであり、コロナによって家賃の支払い遅延が発生している状況は見られません。
今後の経済回復への味方としては、カリフォルニア州不動産協会のエコノミストは、V字での急回復は難しいが、景気の底からの回復にはやや時間がかかるが、その後に急速に回復している“J”字を想定しております。
コロナ収束後も一定のソーシャルディスタンスの維持や、それに伴う規制も残ることが考えられるため、多くの業界においてそれら規制への対応が必要となり、その期間は景気回復は遅いものとなる見込みです。
ただし、一旦、新たな規制への対応が整備されれば、その後の経済は急速に回復していくものと思われます。
次に不動産マーケットに関するいくつかのコメント・記事をご紹介させていただきます。
1.CNBC(全米テレビネットワークの一つ)での5月11日記事。
(記事内容)価格の懸念もありますが、不特定多数の買い手に対して自宅を公開することに健康上の懸念を抱く売り手も多いため、多くの売り手が物件販売をまだ控えております。結果、少ない売り物件に対して多くの買い手が集まったという記事。(よって物件価格は高止まり)
(原文タイトル:As states reopen, homebuyers rush back out, but sellers are staying on the sidelines)
2.NAR(全米不動産協会)の5月21日記事
(記事内容)全米での中古住宅販売は4月は前年同月比でマイナス17.2%減少したが、中古住宅販売価格の中間値は前年同月比で7.4%上昇。これは在庫物件が少ないことと(供給が少ない)住宅ローン金利が史上最低レベルにまで低下していることが影響している。
(原文タイトル:Prices Strong Despite Lockdowns Hindering April Sales)
3. NAR(全米不動産協会)の5月22日記事
(記事内容)30年固定のモーゲージ金利(住宅ローン金利)は3.2%前半と史上最低での水準が続いている。物件価格が前年と同水準にある現在では、規制解除後にはより物件購入者の増加が見込まれる。また、米国国債とモーゲージ金利の金利差はまだ開いた状態であり、さらなるモーゲージ金利の低下余地が見込まれる。(よって購入者の需要は強い)
(原文タイトル:Mortgage Rates Hover Near Record Lows, Could Decline Further)
最後に、ロサンゼルスにおけるコロナ感染予防による規制解除の行程を記載いたします。
今後の予定としてはフェーズ3で学校の再開、フェーズ4でコンベンションなどの大型会議やスポーツイベントの解禁。フェーズ5ですべての規制解除、という工程になっております。
フェーズ3につきましては、もう間もなく導入されるのではといわれておりますが、5月25日現在ではまだ公式な発表には至っておりません。
この記事へのコメントはありません。